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初夏の訪れにより、風が心地よく肌に触れてまいりますが、日中は暑い日が続いていますね。寒暖差が激しい日もありますので、体調管理を十分に行い、お体に気を付けてお過ごしください。さて、本コラムシリーズでは前回、ヒートポンプの原理についてご説明しました。今回は、『ヒートポンプ』を用いた冷暖房機器のメリット・デメリットについてご紹介したいと思います。
最近ヒートポンプによる省エネ性能に注目し、温度を下げるだけでなく、暖房や給湯など加熱機能にヒートポンプの利用が拡大してきています。加熱機能を活用したものとしてはエアコンやエコキュートが著名ですが、洗濯乾燥機にもヒートポンプを利用した商品が登場してきています。ただ、家庭用としては、エアコン等暖房機は多くの電気を使用する機器なので、効率の良いものに変更し電気代を安く抑えることも必要となります。産業分野では、ヒートポンプの熱交換効率の高さに着目し、オフィスビルなどの空調システムや病院・ホテルなどの給湯システムにも利用が拡大してきています。大規模な工場や病院などの設備では、エネルギー分散の観点から、ガスヒートポンプ式の空調管理システムを導入しているところもあります。これからは工場や農場などでも普及拡大が期待され、ヒートポンプの活躍の場がますます拡大して行く事が期待されています。ここで、活躍が期待されているヒートポンプのメリットとデメリットを整理してみましょう。
ヒートポンプのメリットは下記があげられます。
ヒートポンプは、投入動力エネルギーに対し、外部エネルギーを汲み上げるので有効利用できる熱量が大きくなります。これにより、ランニングコストが安くなりCO2排出量も抑えることができます。
ヒートポンプ式給湯器が注目される理由は、深夜の安価な電気料金でお湯を作り、昼間には貯めたお湯を使うという発想ができるからです。電気は基本的には作って貯めておくことが難しいエネルギーなので、昼間と夜間の電力使用量を平準化できれば電力コストを抑えることができます。日本はエネルギー自給率が低く、コストも高いことからヒートポンプ式給湯器の利用を国策として推進している背景もあり、設備導入に補助金が出る事もメリットの一つになります。
ヒートポンプ利用の冷暖房機は、電熱器やガス・石油ヒーターと異なり、空気の熱などの環境熱を利用します。使用電力はポンプを回すためだけで、熱源としては利用していません。
ヒートポンプの要点は、熱移動にあります。同じヒートポンプ装置を使用し、熱移動の方向を変えることで、冷暖房を兼用したエアコンシステムが実現できています。
ヒートポンプのデメリットは下記があげられます。
エネルギー的には有能なヒートポンプですが、やはりデメリットもあります。まず、加熱部分とは別に圧縮機などが必要になり機器が増加し初期価格が高くなります。この初期価格の回収には、エネルギーコスト削減コストから算定すると数年を要します。
また、機器が増えることによって保守費用も上がります。ヒートポンプ式の洗濯乾燥機などでは、定期的なほこりの清掃、圧縮機のモーターの故障(数年)等というトラブルも多いようで、機器構成が複雑になる分、故障のリスクも高くなると考えておく必要があるかと思います。
ヒートポンプ式給湯器は夜加熱を行うので深夜の低周波騒音についても問題になることがあります。冷蔵庫が夜に「ブーン」という低い音を鳴らすことをイメージして戴ければと思います。
ヒートポンプは外気を利用していますので、あまりにも外気温が低いとエネルギー消費効率(COP)が低くなってしまいます。冬場にエアコンを使用した場合、なかなか暖まらない事もあります。また、外気温が低いと、更に霜取り運転が始まることもあり、寒冷地の場合は、ヒートポンプを利用してない暖房機器を選んだ方が効率的なこともあります。
古いエアコンにはヒートポンプの冷媒にオゾン層を破壊するフロン(主にCFCやHCFC等)が使われていました。最近は代替フロン(HFC:ハイドロフルオロカーボン等)に切替わっていますが、代替フロンにも温室ガス効果がみられます。冷媒の今後の研究開発に期待したいところです。
いかがでしょうか?今回は、『ヒートポンプ』のメリット・デメリットについてご紹介しました。エネルギー自給率が低い日本では、ヒートポンプ式給湯器は近年注目を集めており、特にオススメできる暖房機器です。次のコラムでは、ヒートポンプを用いた冷暖房機器の省エネについてご説明をします。少しでも皆様のご参考になれば幸いです。