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結露について-輻射式冷暖房の原理|THEAR

今年の中秋の名月(9月10日)はきれいでしたね。残暑はまだまだ続いていますが、「暑さ寒さも彼岸まで」との言葉通り、空も高く過ごしやすくなってきます。この夏は色々な事がおろしましたが、お彼岸を縁に気持ちを切り替えて、心機一転して明日から過ごしましょう。今回は、温度と湿度との関係で起こる結露について紹介します。

結露とは

 空気には、必ず水分(水蒸気)が含まれています。水蒸気として空気の中に入る事ができる水分の量には限界があり、空気が水蒸気を含むことができる限界の量を飽和水蒸気量といい気温によってその量は変動します。なお、水蒸気を含まない空気を人工的に作ることは可能です。水蒸気を含まない空気と区別するために、水蒸気を含む空気を、湿り空気と呼びます。

温度が高い暖かい空気は水蒸気を多く含んでいますが、冷たい空気は水蒸気を少ししか含むことができないので、暖かい空気が冷えると飽和水蒸気量も下がり、空気中に保持しきれなくなった水蒸気が水滴となって現れてくるのです。この飽和状態の時の気温、つまり水蒸気が水滴に変わる温度を「露点温度」と言います。

結露が発生するイメージ

 物質は、温度と圧力に応じて固体、液体、気体の状態に変位します。水分は、私達の生活の場では、固体の氷、液体の水、気体の水蒸気として共存しています。氷、水、水蒸気は、わずかな温度の違いで状態が変化します。

乾球温度計と湿球温度計

 乾球温度計は、空気の温度を測るために使用されています。単位は30℃の時は30℃DBと表示します。湿球温度計は、乾球温度計のアルコールや水銀の入っている球部に湿布が巻いてあります。単位は30℃の時は30℃WBと表示します。乾球温度と湿球温度の見方は、乾球温度と湿球温度の差で室内の相対湿度を知ることが出来ます。室内が乾燥している場合には、まだまだ水蒸気を含むことが出来ますから、湿った布に含まれる水蒸気はどんどん蒸発し、蒸発するために必要な熱をまわりから奪うため湿った布の温度は下がります。     

1温度計(乾球、湿球)

 また逆に、湿球温度計が乾球温度計と同じ場合は、空気の中の水分が飽和状態になっていることを示します。このため、乾球温度と湿球温度の差が大きければ大きいほど相対湿度は低く、小さければ小さいほど相対湿度は高いと言うことになります。予め換算表を用意しておけば、温度差から室内の相対湿度を知ることが出来ます。

湿り空気線図と露点温度

 露点温度は、湿り空気の状態に大きく関係します。図2の湿り空気線図は、1気圧下での湿り空気の状態を示しており、温度、湿度、飽和水蒸気圧線から比エンタルピーに応じて当該温度を読み取ることができます。右肩上がりの曲線が飽和水蒸気圧線を示しています。

 冬の室内の状態(温度25℃)を想定し、RH55%と、RH40%の湿り空気の状態を示します。

 露点温度は、空気中で水が水蒸気のままでいられるか、液水になるかの境界温度です。例えば、RH55%の空気が15℃の窓面などに接すると、空気中の水蒸気が液水となり、窓ガラスに水滴が発生します(図2黄色ライン)。表面結露の発生です。

表面結露

 結露が進むと、水滴は大きくなり落下します。人が健康的な生活を維持する最低条件といわれる室内のRHは40%といわれます。この場合、窓面が10℃以下となると水滴が発生します(図2緑色ライン)。東京や大阪の年間平均気温は約15℃です。季節による温度変化は約10℃、1日の昼夜温度差は約4℃あり、冬の外気温が10℃以下になることはよくあります。窓ガラスは熱伝導しやすく、室内表面温度が外気温とほとんど変わらなくなることは珍しくありません。私たちが身近に感じる冬型結露はこのような理由で発生します。

 夏場の、外気(温度32℃)の場合、RHが28℃以下の部位に触れると液水が発生します(図2赤色ライン)。この場所が金属や塗装面であれば、表面に液水が残ります。

これが、夏型結露の発生理由です。

 輻射パネルの場合、パネル本体は、アルミニウムを使用しており、上記の湿り線図に基づき、輻射パネル表面に液水が発生し、パネル表面に沿って自然落下する事になります。

 冷房運転時は、輻射パネルが周囲の対象物より、設定温度が低いことから、表面結露は輻射パネルに集中すると考えられます。輻射パネルの場合は、表面結露は避けて通ることはできません。また、壁面と密着した設置をすると壁面との間で自然対流が阻害され、壁面の結露が懸念されます。そのため、事前に設置要領書を基に、施工業者との相談をお願いします。

夏の室内結露対策

 エアコン使用時は、冬のように見える形での結露は少ないですが(輻射パネルは、結露は見えるかたちになっています。)、いろいろな場所で、非常に湿度が高くなります。水蒸気の発生を抑えることと、水蒸気(液水)の排出をおこなうことが重要になります。また、住宅や生活用品も水蒸気を吸収しますので、常に換気を行うことが必要です。

表1 洗濯物からの湿気発生量

木材は、大気中においては空気の温湿度条件に応じた一定の水分を含有し(気乾状態)、この水分は木材の肺胞壁を構成する木材繊維に吸着され、周辺の空気が乾燥すると放出され、湿潤すると再度吸着して空気の湿度を一定に保つ作用があり、調湿作用として知られている。高耐久化のためには、含水率を20%以下に保つことが必要との指針がだされている。

 本年のように長雨が続く場合は、十分な換気に留意を払うことが重要と思われる。調湿効果のある壁仕上げに関しても同じと推測される。

表2 部屋の大きさと含みうる湿気量

 2003年の建築基準法改正で、1時間当たり0.5回の室内換気を実現する24時間換気システムが義務付けられているのもこのためです。

結露とカビ

 最近の日本の住宅は、気密性や断熱性が高く、湿気と温度が保たれやすい環境となり、生活空間として、以前より快適性が向上しています。一方、カビが発生する条件は、「温度15℃以上、湿度75%以上」の高温多湿の条件から、気密性が向上したことからカビが繁殖しやすい環境になってきています。そのため、押し入れは、密閉であるため空気がよどみ、湿気がたまりやすくなります。布団等は一晩で200gくらいの水分を吸収しますので、それを押し入れにいれると湿気がたまります。換気だけでは時間がかかりますので、晴れの日に布団を干すなどの対策も必要がありますね。

図3 カビの増殖域

 下駄箱も、濡れた革靴等が入れたままになりカビが生えるという失敗は多くの人が経験していますので、空気を入れ替える工夫が必要となりますね。

 キッチンは、料理を作っていると、どうしても空気中に水分が多くなります。拡散した水分と臭いが、壁や天井だけでなく、床のカーペットやじゅうたんなどの布製品にも付着しやすくなります。それが原因で、室内全体が湿気を帯びる原因となります。料理を作る際には、キッチンの換気扇を使用し、室内に外気を取り入れ、水蒸気を排出することが必要ですね。

LDKの場合、24時間換気とキッチンの換気扇を稼働させる事に留意が必要ですね。

結露防止で住宅寿命を延ばそう

住宅の寿命は、木部だけならば、奈良、京都の歴史的建造物の1,000年以上とはいかないまでも、100年から200年の耐久性は十分にあります。しかし、快適に住むためには、断熱材や外壁材など、様々な材料が複合して使用されており、それらの施工方法を一歩間違えると、躯体の耐久性に重大な影響を及ぼす結果にもなってきています。

住宅寿命は、結露によって大きく左右されます。結露水が構造材を腐らせ、様々な欠陥を引き起こす元凶になるからです。結露を防ぐためには、住宅の施工方法、換気・断熱・気密など、住宅性能を高める技術が必要です。これらの全体効果により住宅の寿命が決まります。             図4 減失住宅の平均筑後経過年数

 日本と欧米の住宅の平均築後経過年数を比較すると、高温多湿と言う環境ということもありますが、減失住宅の平均年数の低さが目立ちます。

 結露対策を充実させることで、100年住宅をめざしたいですね!

次回は、輻射能力の指標1「冷媒と流路」について紹介します。

著者紹介

雫二公雄 株式会社シアーコーポレーション 技術顧問

日立製作所でインターネット等情報関係分野を担当し、その後、中堅企業にて金属表面改質技術の研究開発を取り纏めた後、ベンチャーや大学、研究機関等の新技術の事業性評価や管理を担当。現在は、半導体関係、二次電池、中小企業事業性評価支援等を推進している。シアーコーポレーションの技術顧問の他にも、日立ITユーザ会社会システム分科会長、長崎県ロボット事業県都委員会検討委員、一般社団法人日本ゲルマニウム研究学会理事長などを務め、輻射冷暖房の普及に取り組んでいます。

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