暖房機器の原理、そのメリットとデメリット(輻射熱編)

2019/01/01

みなさま、あけましておめでとうございます。冬の寒さが本格到来した今日この頃、それぞれのライフスタイルに合わせた寒さ対策が必要ですよね。本コラムシリーズでは、前回、空気の力で温める温風・対流式の暖房機器についてご説明しました。 今回は、『輻射熱』を用いた暖房機器についてご紹介したいと思います。

輻射熱暖房機器「輻射熱で人を暖める。」

輻射熱とは

輻射熱とは、輻射によって得られる熱のことです。熱を持った全てのモノは微弱な電磁波を発していて、この熱を持った物質が電磁波を出すことを「輻射」と言います。人を赤外線センサーで見ると暗闇でもよく見え、海中を移動しているクジラを赤外線センサーで見つけられます。これは生き物だから「赤外線」を出しているわけではなく、熱を持った物質(細胞を作る分子)が電磁波を発しているからなのです。「赤外線って光? 電磁波?」と思われるかもしれませんが、光も電磁波の一種です。そして、目に見えるほどの「光」を発している物体は、より沢山の熱を持っていることが多いのです。白熱電球が明るいのは、ある意味「熱」を作った副産物とも言えます。光っているものは熱く、熱いものは光っています。炎が明るいのもそのためです。「熱と言うエネルギーを持っていると、エネルギーを電磁波(輻射)に変えようとする自然科学の働きがある。」と考えていただければ良いと思います。「電磁波は、熱エネルギーに変換可能である。」携帯電話の電磁波から熱は出ていますがほとんど感じません。レーダー等の強力な電磁波は、人体への影響もあります。

電磁波は種類により特徴的な効果や持つ力が異なります。電子レンジは水分子に熱を与える電磁波を使用し、レーダーは空にあるものを探知することに特化した電磁波を利用しています。これらの電磁波の中で、人を暖める効果が高いものが「赤外線」です。特に赤外線は体の内側まで入り熱に変化するため、効果的に暖められます。輻射型暖房機器はその赤外線を効率的に利用しています。

「輻射」とは熱を持った物質が電磁波を出す現象のことであり、「輻射熱」とはその電磁波を受け取って得られる熱のことで、その輻射熱を使って人を暖めるのが、各種ヒーターやパネルです。 欠点は、電磁波による空気を直接暖める効果が極めて低いことです。これらの機器は、壁や天井、ヒーター本体を暖めた後、空気に熱を移しても、部屋の室温がなかなか上がらないのです。

輻射熱機器のメリットとデメリット

メリット

  • 人体を体の内側から暖める効果がある

デメリット

  • 空気に対する影響力が低く、電磁波が届かないと寒い

電気を輻射熱に変える機器「電気ストーブ」

輻射熱を出しながら対流を作り出している暖房機器として石油ストーブを紹介しましたが、輻射熱を作り出す代表的な暖房機器は、電気ストーブです。

電気ストーブには、ニクロム線(カンタル線)、カーボンヒーターやハロゲンヒーターと言ったものがあります。ニクロム線ストーブは古くから使用され、石英管でニクロム線を覆い、安価で丈夫、すぐに発熱し暖まることができ、使い勝手が良いです。発熱体自体も熱くなり、熱が周囲の空気に伝わり上昇気流を生み、僅かな対流効果もあります。しかし、発生する電磁波の幅が広く、発熱体が高熱で無駄使いのエネルギーが多いです。また、熱に変わりにくい電磁波(可視光線等)を無駄に発生させているとうこともあります。 ニクロム線の代わりに、カーボンを主軸にした物質に電気を流して発熱させるカーボンヒーターは、ニクロム線より多くの遠赤外線が発生し、電気を効率良く輻射熱に変えることができます。発熱体であるカーボンの発熱時に、エネルギーの大部分を電磁波に変えるため、カーボン自体の熱もニクロム線ほど上がりません。カーボンヒーターは、人を暖めることに特化した電磁波を発生させ、物や空気を暖めることにエネルギーを使っていないので、対流効果も期待できません。カーボンヒーターを使えば、人は暖まるけど部屋はそれほど暖まらないと言うことです。ハロゲンヒーターは、ハロゲンを入れた管を発熱させており、人を暖める効果はカーボンの方が高いです。

メリット

  • 人に対する暖房効果が高く、すぐに暖まる

デメリット

  • 暖房効率が悪く、電気代がかかる
  • 効果範囲も狭い

パネルヒーター「設置型輻射パネルヒーター」

ヨーロッパでは主流で、最近の新しい家には標準装備されていることも多くなっている水やオイルを使った暖房機器です。水やオイルを熱して家屋の周囲を循環させたり、暖房器具内部に熱を保持したりします。ストーブ類とは趣の異なる暖房機器です。その特徴は水やオイルと言った熱を溜め込みやすい物質に熱を移すことで、長時間に渡って輻射と対流を使って緩やかに熱を広げていくことが可能なことです。自然な暖かさを生むことができるため、ストーブなどで体を直接温めたくない場合やファンヒーターで空気を乾燥させたくない場合に適しています。

輻射の効果はストーブ類に比べれば弱く、直接的に輻射の効果を体感することは無く、人が気づかないレベルでジワジワ人や物を暖める形になります。その場合、部屋が暖まっているのか輻射熱によって暖まっているのか判別がつかず、輻射熱の効果だとは思わないかも知れません。部屋の断熱性が低いと、暖めるそばから冷えていくので、暖房効果が不十分であることも多いです。

ヨーロッパでは屋舎全体に管を通して、ガスや石油でオイルを暖めて循環させています。オイルは水などよりも熱を溜め込みやすく、高温になります。高温のオイルをヒーター内部に保持していると、オイルの輻射が人や建物に伝わり、且つ直接ヒーターに触れている空気に徐々に熱が伝わっていきます。熱せられた空気が対流を生んで部屋を循環し始め、輻射熱が壁面などを緩やかに暖めることで、徐々に部屋や人が温まっていくようになります。

高温のオイルと言っても、ヒーター自体は火傷や火災に繋がるほどの熱は持ちません。緩やかに全体を暖めていくので、急激に空気が乾燥することも無いのです。そして、一度温まったオイルはなかなか冷えないので、電気代も他の機器と比べると安く済む傾向にあります。欠点は、暖まるのが極めて遅いということ。30分以上稼働させなければ暖かくなったと言う感覚を得ることはできないので、すぐに暖まりたいときには使えません。大量のオイルを内蔵しているため、重くて動かしにくいというのも使いにくさになっています。

このオイルの欠点を改良し、水を利用し輻射熱を放出しやすい金属(アルミニウム等)壁型パネルを活用したものが最近注目されています。水を過熱し温水にするには、電気を利用する方法や、エアコンの項で説明した室外の熱交換器(ヒートポンプ)を使用し、外気温から熱を吸収し温水化し、壁面パネルへ循環させる方法があります。室内に温水を循環させる配管工事が必要になりますが、エアコンの配管と比較し、媒体も水と言うことであり、細菅で耐久性が高いということもあります。

メリット

  • 緩やかに部屋と人を暖め、電気代も安い

デメリット

  • 暖まるのが遅い

内蔵オイルを電気加熱するオイルヒーターや、パネル自体を電気で暖める暖房機器もあります。光を放たないので輻射熱効果はストーブほどありませんが、パネル自体にかなりの熱量を貯込めますので、緩やかな上昇気流で僅かな対流効果もあります。ストーブと違い、体の近くに置いても熱くなく軽量で持ち運びが簡単です。個室やトイレ等に置き局所を緩やかに暖められます。

メリット

  • 安価で持ち運びが容易、どこにでも置けて気軽に使える

デメリット

  • 暖房効果が低く、部屋や体全体を暖めることができない

こたつ

テーブルの下に電熱線を入れ、輻射を発生させ一番冷えやすい足元を暖めます。机等と一体化もでき、邪魔になることが少ないのも特徴です。基本的には脚を直接輻射熱で暖めますが、布団に覆われてこたつ内部は密閉されており、暖められた足や床が熱を持ち、それが空気に伝搬していることで電気を消しても暫くは熱を持ちます。他の輻射方式に比べると圧倒的に発生させるエネルギーに無駄がありません。比較的省エネな暖房器具と言えます。こたつ以外の暖房機器を使わないと部屋の空気が冷え過ぎ、こたつの外に出らないのが欠点かもしれません。

メリット

  • 省エネで無駄なく下半身を暖められる

デメリット

  • 暖房範囲が非常に狭い
  • 布団との間に大きな温度差が生まれる

おわりに

いかがでしょうか?今回は、輻射熱と輻射熱を活用した暖房機器についてご紹介しました。ご紹介した中でも、自然な暖かさと綺麗な空気を実現できる設置型輻射パネルヒーターは特にオススメできる冷暖房機器です。次回は、『暖房機器の原理・メリットとデメリット(伝導熱編)』に関して掲載します。


雫 二公雄

日立製作所でインターネット等情報関係分野を担当し、その後、中堅企業にて金属表面改質技術の研究開発を取り纏めた後、ベンチャーや大学、研究機関等の新技術の事業性評価や管理を担当。現在は、半導体関係、二次電池、中小企業事業性評価支援等を推進している。現在は、日立ITユーザ会社会システム分科会長、長崎県ロボット事業県都委員会検討委員、一般社団法人日本ゲルマニウム研究学会理事長などを務める。

Produced by

The EDGEWATER's Corporation

Manufactured by

PROTOTECH Incorporated