省エネ機器におけるヒートポンプ(省エネ編)

2019/06/15

​​6月も中旬に差し掛かり、降り続く雨に木々の緑も色を深めています。このような時期は天気の良い日に緑を楽しんだ後、快適な家でゆっくりとくつろぐのも良いですね。さて、本コラムシリーズでは前回、『ヒートポンプ』を用いた冷暖房機器のメリット・デメリットについてご説明しました。​​今回は、『ヒートポンプ』を用いた冷暖房機器の省エネについてご紹介したいと思います。

ヒートポンプは省エネになる

​​民生部門や産業用の熱需要を賄っているボイラ等をヒートポンプで代替した場合の一次エネルギー削減効果を推計したデータが一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センターから発表されているのでご紹介したいと思います。図1は、ヒートポンプをボイラ等で代替えした場合の一次エネルギーの削減効果を表したものです。一次エネルギー削減効果(原油換算)は、約27,000[千kL]で約40%削減となり、燃料調達費約2.6 兆円相当であり、日本の化石燃料年間輸入額の約11%にあたります。これくらい大きな削減効果があります。

図1

2020年再生可能エネルギー全体に占めるヒートポンプの割合

EUでは「再生可能エネルギー推進に関する指令」において、一定効率以上のヒートポンプにより利用した「空気熱・地中熱・河川水熱・海水熱」を再生可能エネルギーと定義しています。​​日本では、政府の「未来開拓戦略」において、EU方式を踏まえ、2020年の再生可能エネルギー導入目標にヒートポンプを含めています。その目標のうち、ヒートポンプは約3割と最大級の導入量が期待されています。

図2

ヒートポンプによる省エネの進展

図3は、ヒートポンプの効率推移を示すグラフであります。家庭用エアコンの効率APF※1は7.0以上8.0を達成し、ターボ冷凍機のCOP※2も7.0近くとなっています。ヒートポンプの技術はトップランナー方式※3の導入以降、その効率は年々向上しています​​ 「Cool Earth –エネルギー革新技術計画」においても、国が重点的に取り組むべき21のエネルギー革新技術の一つに選定され、飛躍的効率向上等の目標が掲げられています。​​高効率化を実現した主な要素を家庭用エアコンを例に紹介すると、インバータ※4による運転制御、冷却ファンの高効率化、熱交換器の性能向上、コンプレッサの改良などがあります。

図3

高効率化による省エネへの進歩


COP=6以上(7に近づいている)ということは、消費する電力の6倍の熱エネルギーを得られることを意味し、高効率ヒートポンプが省エネに貢献している事が証明できます。

​​暖房費は、電気代と灯油代、ガス代との関係で変わりますが、COP=6以上だと石油ストーブよりも、ヒートポンプ利用暖房機の方が、暖房費が安くなるといわれています。

省エネ家電を選ぶときは、COP値がなるべく高い商品を選ぶのがお勧めです。また、消費者が効率の改善による性能向上を求めたことが、メーカーの開発インセンティブとなり、急激な高効率化が達成されたと言われております。これからも私達消費者から情報発信が必要になって行くかと思います。

※1:APF:Annual Performance Factorの頭文字をとったもので、通年エネルギー消費効率とも呼ばれる省エネに関する指標である。

​​※2:COP:Coefficient Of Performance(成長係数)の頭文字をとったもので、特に冷暖房器具の省エネ性能を表す際によく使われています。​​・冷房COP=冷房能力(kw)÷冷房消費電力(kw)​​・暖房COP=暖房能力(kw)÷冷房消費電力(kw)​​

※3:トップランナーとは、自動車の燃費基準や電気・ガス石油機器(家電・OA機器等)の省エネルギー基準を、各々の機器においてエネルギー消費効率が現在商品化されている製品のうち、最も優れている機器の性能以上にするという考え方です。(省エネルギーセンター説明資料抜粋)​​

※4:インバータ(Inverter)とは、直流または交流から、周波数の異なる交流を発生させる(逆変換する)電源回路、またはその回路を持つ装置のことである。

効率良く消費電力も削減

ヒートポンプの効率が良くなると、冷暖房機の冷暖房効率も高くなっていきますので、古いエアコンを買替えるだけで省エネルギーにつながります。初期購入費用は発生しますが、消費電力が減れば電気代も安くなるので家計も助かります。

図4の通り、約20年前のエアコンとくらべると、毎年消費電力量は減少し2018年度で半分近く(55%)になっています。​​ これは、住宅の断熱性能が向上し、冷房効率が向上した事も加味したとしても、大きな削減効果であります。国の推進するZEH※5住宅の普及の後押しに一役貢献していますね。

図4

​​※5:ZEHゼッチとは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(Net Zero Energy House)の略で、住まいの断熱性・省エネ性能を上げ、太陽光発電等でエネルギーを創ることにより、年間の一次消費エネルギー量の収支をプラスマイナス「ゼロ」にする住宅を指します。

ヒートポンプ利用によるCO削減効果 


ヒートポンプは、熱を集めて移動させる技術であり、電力は熱を運ぶ動力として使うため、少しの電力で大きな熱を利用することができます。ガスや石油等の燃焼方式に比べると、CO排出量の大幅削減が実現できる技術として注目されています。​​ 家庭用の暖房・給湯、業務用の空調・給湯、産業用の空調・加温・100℃未満の乾燥でそれぞれの需要において燃焼式の熱源をすべてヒートポンプ式に転換した場合、約1.3億トンの削減が可能との試算があります。これは、日本のCOの約10%削減に相当します。

図5

「業務部門」のエネルギー利用の内、給湯や冷暖房といった「熱」利用が約半分を占めています。実際は、給湯や暖房需要のほとんどが、化石燃料を直接燃焼して使用されています。​​ 給湯や暖房に業務用エコキュート※6などのヒートポンプ機器を導入すれば、COの削減が期待できると考えられています。

一方、図6の用途別割合から、家庭でのエネルギー消費も、空調や給湯といった「熱」利用が大半を占めていることがわかります。​​ 家庭でもこの熱需要の大半が化石燃料によってまかなわれていますので、暖房は高効率エアコン、給湯はエコキュートなどのヒートポンプでまかなえばCO削減が可能です。​​オフィスなどでは、最もエネルギーを消費しているのは冷暖房です。CO排出量の削減には冷暖房の対策が最も重要です。ホテルや病院、飲食店でも給湯のエネルギー消費削減も重要だと思われます。 

図6

ヒートポンプ技術は、冷暖房・給湯需要をまかなえる有力な技術であります。今後もヒートポンプの技術革新によりエネルギー効率はさらに向上し、環境性能が向上するのは間違いないと思われます。ヒートポンプを賢く使って、地球に優しい生活を送りましょう。

​※6:エコキュート(Eco Cute)とは、ヒートポンプ技術を利用し空気の熱で湯を沸かす事が出来る電気給湯機で冷媒としてフロンではなく二酸化炭素を使用している機種の商品名です。​​また、エコジョーズ(Eco ジョーズ)とは、これまで捨てられていた熱を再利用して、少ないガス量で効率よくお湯を沸かすタイプの給湯器です。2000年6月から販売されています。

おわりに

いかがでしょうか?今回は、『ヒートポンプ』の省エネについてご紹介しました。​​ご家庭やオフィスなどで最もエネルギー消費をしているのは、冷暖房です。ヒートポンプ式冷暖房機器を使用することで、地球に優しいライフスタイルを送ることができます。​​本コラムでは、3部構成でヒートポンプ暖房機器についてご説明をしました。少しでも皆様のご参考になれば幸いです。


雫 二公雄

日立製作所でインターネット等情報関係分野を担当し、その後、中堅企業にて金属表面改質技術の研究開発を取り纏めた後、ベンチャーや大学、研究機関等の新技術の事業性評価や管理を担当。現在は、半導体関係、二次電池、中小企業事業性評価支援等を推進している。現在は、日立ITユーザ会社会システム分科会長、長崎県ロボット事業県都委員会検討委員、一般社団法人日本ゲルマニウム研究学会理事長などを務める。

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